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日本史(戦国史)やらゲームやら漫画やらメインに 二次創作と妄想を垂れ流すサイトです。 初めての方は”はじめに”からどうぞ。
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writer:柴漬亀太郎 2024-05-19(Sun)  
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いいか坊主世の中には現実逃避というものがあっry
writer:柴漬亀太郎 2008-07-22(Tue) 南北朝時代(小説) 
明日までのレポートの進行状況→3/2000
お…俺この戦いが終わったら今度こそ、今度こそ太平記…ぐふっ



「愛の屍 憎悪の棺」(足利直冬と直義と…)
実父と義父、矛盾する全てを抱える直冬の葛藤。



 








憎らしい妬ましい恨めしい。
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。









「直冬?」

ゆるゆる、と首を振った。
今だ重たい頭の中の靄を振り払うように段々と強く。

「大丈夫か?」
「……はい、何でもありません。少し、ぼんやりしていました。」
「常に気を抜くな、とは言わない。しかしそれが大切なところで出来るよう、常に万全にしておくことは大切だ。本調子でないのなら休みなさい。」
「いえ、本当に大丈夫なんです。ただ、ただ、今のは……」

―――今のは?
聞き返されたのか、自問自答の幻聴だったのか、判別できないほどに
自身が憔悴しているのだと思うと余りにも情けなかったが、それ以上に直冬を戦慄させたのは
反射的に、自然に湧き出たその問いに対する己の答えだった。
意味は為さず、音にはならず、しかし腹の奥底から喉を抉る様にして遡った
それのおぞましさに吐き気がする。違う、こんなものは違う。
(…気のせいだ。気の迷いだ、なんでもない、なんでもないんだ――……)
今のは、今のは、只の、

「………ただ、の、…ええ、ただ、桜に、見惚れていたんです。余りに美しかったもので。」
「…………そうか。確かに今年の桜は美しい。」

そうか、と念を押すようにもう一度だけ呟いたきり追求してこない義父の心遣いが
死ぬほどありがたかった。見てみぬ振りをするように桜を見上げる義父に甘え、必死に内面
で暴れ狂う感情を押さえつけた。大丈夫だ、もう落ち着ける。ちゃんと、息が出来る。

「……はい、だからもう大丈夫です。ご迷惑をおかけしました。」
「そんなことは無い。直冬、今日は少しより道をして帰ろう。私も桜を眺めて居たくなった。」
「え…、けれど、…!」
「私がそうしたいのだ。暇ならば付き合いなさい。」

そう言って義父は取りつく島も無く踵を返し、一人歩き出してしまった。
自分が追いかけてくる確証があるのだろう、のんびりと、しかし振り返ることなく。
そんな義父の背中をほんの暫くの間、直冬はその場に立ち尽くしたまま見つめていた。
嘘の下手な人だ。気遣いの下手糞な人。
いつだって済まさねばならぬ仕事を数多く抱える、頑固なまでに真面目すぎる義父が
どんなことがあろうとそれらを放って桜を眺めたくなるなどありえるわけが無かった。
結局は、自分の為。また要らぬ気遣いをさせてしまった己の未熟さに唇を噛む。
しかし、噛んだ唇の皮を破り滲み出してくるそれは、それは、本当に。

(違う!!私は、そんなことを思ってなどいない!!)

義父の瞳がこちらを向かないのを幸いとばかりに、直冬は天を仰ぎ心中で慟哭した。

(私は、私は恵まれている。義父上は素晴らしいお方だ。誰よりも尊敬している。そして私を十分すぎるほど愛して、信じてくださる。実の息子のように!!私は誰にも哀れまれる必要がないし、自身を哀れむ必要もない。恵まれている、愛されて、こんなにも幸せなのだから…!!)

それは紛れも無い事実だ。客観的な事実であるだけでなく、直冬自身もそう思っている。
なのに、なのに何故それを真実を事実を言い聞かせるだけでこんなにも胸が軋むのだろうか!
愛している愛されている信じられている信じている信じている信じている……
そう言い聞かせなければいけないことが、信じなければいけないことが、
悲しく、浅ましく、惨めたまらなかった。
義父が自分に向けてくれている全ての愛情を踏みにじっているのと同じことではないか!
それは真実だった。真実の筈だった。
涙の代わりか血の代わりか、どす黒い矜持が腹の中にどろりと落ちた。

(…認めない、認めるものか、そんな筈はない……ないんだ…!!)

ゆるゆる、と首を振った。
今だ重たい頭の中の靄を振り払うように段々と強く。
そしてゆっくりと義父の背中を追うためにその足を踏み出した。
ひらひらと舞う桜の花びらが義父も何もかも覆い隠してしまったように見えたのは、
きっと呆れるほど都合のいい錯覚で、酷い悪夢だったのだ。

 

 


じ、と少し堆く積まれた桜の花びらを踏みにじる。
遠ざかる桜の木下には幸せそうに笑い佇む父子の幻があった。
幻だった。

 




 

憎らしい妬ましい恨めしい。

(憎んでなどいない妬んでなどいない恨んでなどいない)




私だって 愛して、欲しかった。

(羨んでなど、いない。)








直冬の悲劇の人っぷりが美味しすぎる件について。他兄弟と絡んでも十分美味しいですが尊氏・義詮親子と絡むとその魅力は無限大ですな!今の自分に対する誇りと直義への感謝に対して隠し切れない嫉妬と羨望
、相反する矜持、尊氏を憎んでいるけれど愛して欲しい。そんな自己矛盾に生涯悩まされ続けるがいいわ!とか思ってます(えええ)内省できる人なので余計に悪循環スパイラル。義詮には優越感と劣等感がない交ぜになっとるといい。直義も直冬のそんな気持ちは何となく察してるけど血が繋がってるんだから誠意を持って接すればちゃんと分かってくれる筈!とか思ってる感じで。直義は基本的に兄貴大好きすぎてその兄貴を憎むとか憎まれるいう発想ゼロな気がするあの男。だからこそのあの悲劇というか何というか…ああああ。

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