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日本史(戦国史)やらゲームやら漫画やらメインに 二次創作と妄想を垂れ流すサイトです。 初めての方は”はじめに”からどうぞ。
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writer:柴漬亀太郎 2024-05-19(Sun)  
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何やってんだ私…
writer:柴漬亀太郎 2008-11-08(Sat) 南北朝時代(小説) 
本当に何やってんだ…早く寝ろよ…

「ハッピーエンドが来る前に」(足利直義と高師直)
不倶戴天の敵、互いを憎悪しあった二人の本音と建前と真実と。
※へたれ兼ブラコン直義注意(って注意するまでもない)あとうちの師直は正直どうかと思った。





誠実でありなさい。忠実でありなさい。
清廉でありなさい。潔白でありなさい。
何よりも公正で、誰よりも真摯でありなさい。懸命でありなさい。
そしてどうかその手をその背をその肩を、貴方の両手で支えてあげて。
願わくば、永久に隣にいられますよう。
兄弟二人、同じ夢を見続けて。

 


崩壊は早かった。思ったよりもずっとずっと。
勿論まったく考えなかったわけではない、予測しなかったわけではない。
自分は兄と違って相当な現実主義者だと自覚している。
そうして兄を支えようと決めたのだから。
けれど、けれどやっぱり何もかもが崩れる日はあまりにも早すぎた。
分かっていて、当然の結果だというのに、直義にはあまりにも―――

「貴方とは気が合うと思っていたんですがね、実は。」

白く、しかし明るくはなかった。
背中から聞こえてくるそれは直義がこの世で最も嫌う存在のこの世で最も憎たらしい声だ。
相手が分かっているのだから振り返る必要もない。
そもそも礼儀を尽くす必要のない相手だったし、
何よりもう礼儀を尽くすなんてことは何の意味も持たないからだった。
この世で最も嫌う存在にこの世で最も研ぎ澄まされた悪意をありのままに
ぶつけられるのだったら、それはそれで何と爽快で快適なことだろう!
けれどそれを差し引いたって、直義にとってはこの男と言葉を交わす苦痛が勝った。
そうしないのは、だからだ。もしかしたら直義のプライドの問題であったかもしれないけど。

「嘘などではありませんよ?わたくしは、貴方と仲良くなれるかも知れないと思っておりました。少なくとも、絶対になれないとは思っておりませんでしたよ。賽の目さえあえばそれこそ。」
「……らしくもない二枚舌はさっさと切り落とせ。呆れを通り越して虫唾が走る。」
「相変わらずつれない方ですな。貴方様もご存知でしょう。わたくしは自分の欲求、性根には素直な男です。駆け引きの場ならばいざ…このような場で貴方に媚を売ることが何の得になりましょうか、ねぇ?」

くつくつ零れる笑いに薄暗いものはない。
実際、高師直という男は実にあけすけな、裏表のない男だったと言ってもいい。
男は自分の欲求に、信念に、理想に、世界に忠実なだけ。
何にも物怖じせず立ち向かうその姿が思いがけず多くの人間の信を得ていたことも知っている。
だから、その言葉に―例えばどんな侮蔑が含まれていようと―偽りも曇りもないことは
明白だった。直義は師直をこの世で一番厭うていたからこそ、男をよく知っている。
けれど、眉を顰めた。振り返らず、ただ嫌悪の情だけを明らかにした。
なんてことはない、それでも、不快なものは不快なのだから重症だ。
そんな直義の様子を気にも留めず、師直は続ける。

「ええ、気が合うのではと思っておりました。また信じてくださらないでしょうけれど、わたくしは貴方様を尊敬いたしておりました。貴方は尊氏様と同様、わたくしたちの希望だった。ええ、貴方は信じてくださらないでしょうけれど。貴方様はまさしく新しき秩序の体現者。貴方様は古き権威に怯みもしなければ恐れもしなかった。錆付き鈍りきったそれを頂に据えることに誰よりも冷徹であらせられた。尊氏様の為に武士たちの為に。貴方は御上の言葉さえ偽り、その子供たちを手にかけることさえ躊躇わなかった。その貴方様の姿にわたくしどもがどれだけ勇気付けられたことか!もう下らぬ空虚な器に怯え形ばかりに畏敬に搾取される時は終わったのだと!名実ともに我らの時代が来るのだと!ああ、信じてもらえないでしょうね。分かってもらえないでしょうね。あの時わたくしの胸を焦がさんばかりの昂揚は。わたくしたちが貴方様に抱いた親愛も憧憬も尊敬も。信じていただけないのでしょうね。私は、貴方様が好きでした。」
「………。」
「ご安心くださいな。もとより返事さえ期待しておりませんので。ましてや同意の言葉など。」

ただ、気まぐれにでも知っておいて貰いたかったのですよ。
と師直は再びくつくつと楽しそうに笑った。やはり全てが不愉快だった。
師直の言葉にもとより耳を貸す気などない。ましてやそれに対して返答など。
彼の言葉は嘘ではなかったが、本当のことでもなかった。
結局、どこに行っても辿りついても閉じ込められても其処から逃れられはしないらしい。
直義は師直への嫌悪を、師直は直義への悪意を。それぞれの形を持ってぶつけ合う。
其の間に例えばどんな感情が紛れ込もうとそれが嘘であろうとなかろうと、
…卵が先か鶏が先かなどということは何の材料にもならず、最終的にはそこに帰結するだけ。
要するに何の意味もないのだ。
師直は”知っておいて欲しかった”と言ったが、それこそ無意味以外の何者でもない。
むしろ予防線のような、いい訳めいたそれに吐き気さえする(本人にそのつもりはないだろうが)
肝心なことは、直義は師直を憎んでおり其の逆もまた同じという只一点に尽きる。
そう、残る事実など只一つ。全てが通り過ぎた後に残るのは事実という真実だけだ。
其の過程にあった残りえない、残りえなかったものなど結局は加味することが出来ないし
本来ならばするべきではない。そんなものは幾ら推測したところで事実になりえないからだ。
(例えば、それが本当のことだったとしても。嘘だったとしても。)
だから、彼の先ほどの御託など何の価値も意味も意義もない戯言にすぎない。
(例えば、足利直義がどうしてこんなにも高師直という人間を憎んでいるのか、なんて)

「好きでしたよ。貴方という人が。尊敬していましたとも、心の其処から。」
「……もうその減らず口を止めろ。」
「ええ、だから仲良くしたかった。仲良くできると思っていました。だって、貴方様は。」
「止めろといっているッ!!」

直義は高師直という人間の全てが不快だった。
だから、別段おかしいことでもないはずであるのに、直義は自分でも驚くほど激昂した。
師直という男の全てが不快で、勿論声も言葉も思考回路も全てが不快だったから、
直義が怒り出すことはまったくをもって普通だったのだけれど、それでも異常だった。
怒る、憎む、嫌悪する心のままに、叫ぶ、怒鳴る、制止する。
意味のないことだ。
意味のないことだ。
意味のないことだ!
足利直義は、心の其処から、全身全霊を持って、高師直の言葉の続きを拒絶する。

 

 

 



「貴方様とわたくしは、似たもの同士でしたから。」


ご 存 知 だ っ た で し ょ う ? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


白い。しかし、明るくはない。
直義は一人、其処に立ち尽くしていた。背後からの声は、もう無い。
直義がこの世界の誰よりも憎み嫌悪し厭うた相手は相手はもうどこにもいない。
もう自身以外の音が紡がれること無い空間の中で、直義は黙って耳を塞いだ。
初めは優しく、だんだんと強く、頭を抱え込むようにして、ついに直義は膝をついた。

 

誠実でありなさい。忠実でありなさい。
清廉でありなさい。潔白でありなさい。
何よりも公正で、誰よりも真摯でありなさい。懸命でありなさい。
そしてどうかその手をその背をその肩を、貴方の両手で支えてあげて。
願わくば、願わくば、願わくば――――

 

終わりは早かった。思っていたよりもずっとずっと。
勿論まったく考えなかったわけではなく、予測しなかったわけでもなかった。
けれど、結局それを避けることが出来なかったのは。
(直義の甘さで、弱さで、只の失態。だけど、けれど、本当は、だって、もう―――)
意味のないことだった。全てが当然の結果、自業自得。それだけが残った事実で、真実。
それなのに、直義はあまりにも――――

(本当、は  )

思いは言葉にならない。言葉にはさせない。
直義は兄と違って相当な現実主義者だったから、其の矜持がそうはさせなかった。
それはどこにも残らなかったものだ。何の意味も持たないことだ。
真実にはならなかったことで、最早永遠に真実になりえない、無意味な。
からからに渇いた喉から、しかし悲鳴すら零すまいと直義は唇を噛み締めた。
直義をこれまで生かし、そして殺した張本人である矜持と添い遂げると決めたのだ。
まして不倶戴天の相手である男がいるかもしれないのに醜態をさらすことなど出来るわけがない。
それだけが直義にできるせめてもの事だった。
自分の死を、罪を、過ちを、せめて無駄にしないための。最愛の兄への、最後の。

 

 



 

 

 

 

(本当は、本当のこと、は。)
(御上の言葉を偽ってまで兄上の背中を押そうと思ったのは、)
(密かに親王を殺すことを選んだのは、他の皇子たちさえ、殺したのは、)
(高師直が、憎かったのは、あの男を結局殺さねばならないと思ったのは、それは、)
(本当は、)


(兄上、兄上。違うんです、どうか聞いてください。受け入れてくれなくてもいい、戯言だと一蹴してくれても構わない、兄上、お願いです、わたしは、直義は、本当は―――――)

 


なのに、どうしようもなく泣き出したかった。








何かこういう話が書きたかったんだという気持ちだけ受け取ってください(死)相変わらず構成が滅茶苦茶なのは見逃してくださいOTL見逃さなくてもいいです。直義と師直はまさに馬が合わない(ってレベルじゃねえぞ)二人だけど、二人とも古い秩序を壊して新しい武士の秩序を打ち立てることを望んでいたのは同じだよな、と思って妄想した結果がこれです。まあベクトルは正反対だったんだけどね!!直義と師直が似たもの同士でもある、という話はまた別に書きたい感じです。まあこの話結局この二人の話と見せかけて足利兄弟話(尊氏←直義)なので。あとうちの高師直についてですが「駄目だ!キャラが薄い!もっとこう…変な風にバサラを表現したいんだ!」と考えた結果180度まわって意味不明なキャラになりました。ごめん、でも師直好きだよ。


 

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