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日本史(戦国史)やらゲームやら漫画やらメインに 二次創作と妄想を垂れ流すサイトです。 初めての方は”はじめに”からどうぞ。
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writer:柴漬亀太郎 2024-05-08(Wed)  
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兄弟ハァハァ
writer:柴漬亀太郎 2009-06-11(Thu) 南北朝時代(小説) 
鎌倉公方家ハァハァ…室町いいよ室町最高だよ…(とりあえず落ち着こうか)
とりあえず萌えだけを原動力に書いたんでいろいろ酷い。いつものことだね。
ところでこれはまだ(というかまさしく)南北朝時代の話なんですけれども、
このカテゴリは南北朝時代といいつつ、鎌倉後期~室町前期ぐらいをカバーして行こうと思います。
室町後期は(とりあえずこの先書いたら)一旦他史他時代カテゴリに入れるってことで。


「水よりも濃い海に沈む」(足利基氏と導誉)
歩み寄りたいのか歩み寄りたくないのか、とにかく歩み寄れない兄弟と、
その仲を取り持ちたいらしい導誉の話。何か色々ぐだぐだでぎすぎすしたアレな感じ。
ちなみに、義詮→室町幕府二代将軍(兄) 基氏→初代鎌倉公方(弟)






(…ほう、)



珍しいものを見た。
いや、更に正しく付け加えるのならば珍しい人を珍しい場所で見た。
次第に歪む口元と気配を必死に殺しながら導誉は目当ての人物の元へ――
らしくもなくぼんやりと廊下に立ち尽くしている基氏に殊更陽気に声をかけた。

「これはこれは御舎弟殿!お久しゅうございますなぁ。いつこちらへ?」
「……!…判官殿かい。これはどうもご挨拶痛み入るよ。」

残念というか流石というべきか。基氏が見せた動揺はほんの僅かなものだった。
数秒前の茫洋とした無表情から一転して今は既にいつも通りの皮肉に満ちた鉄壁のそれだ。
まあやはり不快なものは不快だったようでそれを隠しもせず眉を顰めている点では
まだまだつけこみ甲斐がありそうなものなのだが。いや若さとはいいものだ。
こちらも隠しきれていないだろう悪戯心を裏ににこやかに挨拶すれば、
青年はぶっきらぼうに鼻を鳴らして形ばかりの返事をした。
いつものことながら好かれていはいない。

「おや、もうお帰りになられるので?」
「用ならもう済んだのでね。これ以上無駄な滞在で将軍のご不興を買う必要もないだろうし。」
「それは残念。将軍殿と御舎弟殿と某。久闊を叙して御歓談に預かろうとでも思っていたのですが。」
「それはそれは。ああ、真残念極まりないが今回は遠慮させていただくとするよ。私も何分忙しい身の上なのでね。もし次の機会があったらまた懲りずに誘ってくれたまえ判官殿。」

皮肉と不快感以外の感情は殆ど読み取れない起伏のない早口で一気にそう言ってのけると
基氏はひらひらと手を振りながら導誉の脇をすり抜けていこうとした。


「…笙、ですかな?」


基氏の足がピタリと止まる。あまりにも分かりやすく。
そう、先ほどからかすかに、途切れ途切れに聞こえてくるのは笙の音だ。
音を確かめたり、何度も同じ部分を練習しているのだろうどこか不器用さは
恐らく奏者が個人的に練習をしているからだろう。師範の教授はいつだったか。
そしてその奏者の正体など、言うまでもない。

「そういえば御舎弟殿は笙の名手だとか。一度某もご拝聴したいものです。」
「………。」
「そうですな、今度ご兄弟で共に演奏なされるというのは如何ですかな。御舎弟殿は楽にも造詣が深いと伺っております。」
「………で?」
「某も少々の心得はございます。僭越ながら是非一度お耳に入れていただきたいと思っておりますよ。」
「……だから、何。」
「よろしければ某にもご教授頂けると幸いなので」
「…いい加減にして欲しいんだけどな、佐々木判官。今すぐその回りくどい言い回しをやめてくれるかい?僕に言いたいことがあるならさっさと直接いいなよ。」

振り返った基氏の声は一段と低い。苛立ちは最早殺意にさえなるのではないか。
(むう…これは少々つっこみすぎたか。)
一応内心で反省らしい言葉を並べては見るものの実際は欠片も反省していない様子で
(実際反省しているとは言いがたかった)道誉は顎に手をやった。

「興味があるのならば態度で示せばよいのではないのですか?」
「別に興味なんてないよ。ただ偶然耳に入っただけさ。」
「それでも共通のご趣味であらせられるかもしれませんでしょうに。基氏殿はお詳しいのでしょう?」
「将軍殿と違って所詮は道楽だからね。気負いもしなければ無駄な知識もつくというわけさ。将軍殿は肩に力が入りすぎているようだよ。相変わらず、だな。」

全然上手くならないんだから。そう言外に含ませて基氏はわざと挑発的に唇を歪めた。
あまりにも不敬極まりない、不用意な言葉を故意に吐き捨てて見せるのは
基氏本人のシニカルな、しかしともすれば自虐的とも言えるだろう捻くれた性格に
よるところも大きいが、恐らくは導誉への意趣返しだった。
基氏は導誉がどういうつもりでこの話を吹っかけてきたのかを概ね理解している。
理解しているからこそ、けして導誉が基氏の不利になるようなことを義詮に報告しない
であろうことを予見している。全て計算ずくでのお返しのつもりなのだ。
既に主導権は自分にあると確信し、そのままどんな挑発で引き止められようと
適当に導誉をあしらいこの場を去ろうとした基氏だったが、
その歩みは彼の予想だにしない一言で再び遮られることとなった。

 


「言えばよろしいのではないですか。”何なら自分が指導してやってもいい”とでも。」

 


絶句、と言うより他無かった。

 

「……………………………………は、………?…………」

かろうじて搾り出せた言葉もそんな風に間抜けに聞き返す音でしかなくて。
(何を、言ってる?この男。)
基氏の困惑はその顔を見るまでも無く明らかで、更に言うならば
導誉に向ける眼差しが驚愕を通り越して同情と侮蔑さえ含んでいるのも明らかだった。

「言えばよろしいではないですか。」
「………ばっ…………かじゃないの………」

あっけらかんと嫌味も何も無くただありのままにとんでもないことを言ってのける導誉に
ようやくついてでた言葉はそれだった。そう一度口に出してしまえば後は何もかもが
堰を切ったように溢れ出す。そうなったら一瞬にして真っ白になった頭もどんどん冷えてきて、
例えようも無い苛立ちと怒りが込み上げて来た。

「…判官殿がそこまで馬鹿なことを言い出すとは思って無かったよ。それともそれは新手の離間工作か何かかい?それにしてもお粗末過ぎて涙が出るよ。僕に、それを言えと?そうしろと?馬鹿馬鹿しい。馬鹿馬鹿しすぎて笑う気にもならないよ。君が常々何を企んでいるのかは知っていたつもりだったよ。それでも節度というものはあると思っていたんだけどね…もういい、私が愚かだったようだ。」

表情から言葉から全身から、その怒りを隠すことなく余すことなく一息に導誉にぶつけ、
基氏は今度こそ踵を返した。もう導誉の引きとめる言葉は無い。

「………失礼するよ。将軍殿に精々宜しく。」
「…失礼致しました。ご道中どうかお気をつけて。」

基氏は何も応えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて角に消えて影も形もなくなるまで、なくなった後も暫く、
導誉は基氏の背中を見送り続けていた。

「……そりゃあ確かに怒るにきまってますなぁ。面白い筈が無い。いくら義詮殿でもそれはそれはお怒りになられて兄弟大喧嘩。うむ。下策も下策。火を見るより明らかですとも。」

うんうん、と至って本人は真面目な調子で導誉は頷いてみせる。
そこに基氏がいたのならば、それはそれは眉を顰めるどころではなかっただろうけれど。
基氏の高圧的な申し出にぽかんとした後泣き出しそうに顔を歪めて真っ赤になって怒る
義詮の姿まで想像してしまい、思わず噴出しそうになる。面白くはあるかもしれない。
下策も下策。そりゃそうだ。ただでさえ劣等感を感じずにはいられぬ優秀な弟から笙の
手解きを受けるなど義詮の繊細でいて頑固な矜持にはけして許容できたものではないだろう。
そんなのは誰にだって分かる。義詮と基氏の不仲を知っているのならばより。
だからこそ基氏は激怒したのだろうし、導誉の言葉を本気だとも取らなかっただろう。
今まで以上にコケにされたと思っても仕方がないことだ。
実際導誉もそんな方法で万事上手くいくなどとは思っているはずも無かった。
思ってなど、いなかったが。しかし。

「……けれどねぇ、基氏殿。そうやって否定するけれど貴方様は結局何もしないんじゃありませんか。」

導誉はそこにはもういない青年に、殊更真摯に語りかける。
基氏の理解は、所詮概ねであるのだ。概ねでしかないのだ。彼はそれを理解していない。
下策も下策。それがならないのは分かっていても。
好意も悪意も。否定も肯定も。親愛も憎悪も。どこにも立たず何を選ぶことも無い。

(兄上は私が嫌いで嫌いで仕方がないのだ。私が何をやっても気に入らない。持つ必要のない劣等感で己が眼を曇らせている。私が兄上を馬鹿にして見下していると思い込んでいる。そんなことは無いのだといってやっても信じない。呆れたものだ。呆れが伝わればますます疑う。兄上、可哀相で仕方のない兄上。兄上が嫌っているから、仲の良い兄弟になれるはずもないのだ。どうしようもない兄上。可哀相な兄上。孤独な兄上。兄上が信じればいいのに。嫌いでもいいから私を信じてくれさえすればいいのに。どうせ無理だろうけど。兄上が、兄上が、兄上が―――)

理解しているからこそ理解される筈が無いと理解しているとそう信じているから。
どうせ何も成るはずがないと結局は何もかも諦めているから。
その理解と諦観を、言い訳に。

「だったらいっそ喧嘩でも何でもしてしまったほうがよっぽど健全な関係だと思うのですがねぇ…やれやれ。ま、どうすりゃ一番いいのか分からないからわしにも困ったものだ。」

誰が見ているわけでもないというのに導誉はさも困ったように大仰に肩をすくめた。
らしくもない気を利かせるべきではないということだろうか。
確かに導誉は基氏のことも義詮のことも嫌いではないのだからこれはこれでいいのだけれど。
そしてあの青年が本当に今のままでも構わないと思っているのなら、話はずっと楽だったのだが。
はたはた困り果てているつもりだが、零れ落ちた溜息は酷く気の抜けたものだった。
(まったく。)
何だかんだと厄介なものを背負い込んでしまったものだ、と呆れてしまう。
これ以上踏み込んでも大した益になるとは思えないし、何より苦労の割りに
リターンが少なすぎる。兄弟げんかの仲裁など昔からそんなものだ。
ああ、もうだったらさっさと首を突っ込むのは止めにしてしまおうか。
そもそも何故自分はこの兄弟の仲に入れ込んでやろうなどと思ったのか。
まあ、それなりに真摯であっても真剣ではないからしてやるといってもこの程度、
それが基氏にも暗に伝わっているからこそのあの態度なのだろう。
(やれやれ。)
導誉はもう一度、今度は胸中でだけそう呟いて苦笑する。

導誉の脳裏に、彼らとよく似た、彼らではない兄弟の残像が蘇る。
つたない兄の笙を聴いて微笑む弟、それに気をよくして笑う兄は――――

 

 

 

 

「…………ま、ここまで来たからにはもう少し見届けるとするか。疲れるには疲れるが…退屈はしないですみそうなことだし。」


精々大人の目で見守るとしよう、と導誉は笑い自らも基氏とは反対の方向に踵を返した。
さてさて今日は義詮のどんな話を聞くことになるのやら。
何事もとりあえずは楽しむ構えをとること。それが導誉の人生のスタンスだった。

(まあ、とりあえずの範囲で約束は守るとするよ。足利の。)

義詮の笙を聴く基氏の、あの酷く無防備で穏やかな、笑みになりきれなかった微笑に免じて。
誰が聞くでもない誰が見るでもない受け取るものは誰もいない言葉に合わせ、
餞別とばかりに導誉はどこかに大きく手を振った。

 

 

 


(それでも、彼らは溺れ死ぬこともできずにそこで生き続ける他ないのだから。)










何か色々詰め込んだら(詰め込んだつもり)話の焦点がぶれまくったような気がする話。うちの義詮と基氏と導誉はこんな感じですよーという話というか。互いが互いに相手を言い訳に和解(というほど仲悪くもないんだが)を結局は諦めている兄弟と、これでもそこそこ真面目にその仲を取り持っているつもりの導誉さん。尊氏直義の悲劇を知っている導誉さんとしてはこれはこれで悪くない兄弟関係だとも思っている。この兄弟の愛憎劇に上杉とか絡んできて更に泥沼化するんですけどそれは又今度的な。導誉さんはどう書いたらいいかわからない人物の一人なんだけど、ふざけた信用できない男に見えて誰よりも尊氏に誠実な人間だといいな、と思う。結果論だったとしても。要するに大河導誉が大好きです(謎)

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