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日本史(戦国史)やらゲームやら漫画やらメインに 二次創作と妄想を垂れ流すサイトです。 初めての方は”はじめに”からどうぞ。
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writer:柴漬亀太郎 2024-05-20(Mon)  
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捏造南北朝
writer:柴漬亀太郎 2008-06-13(Fri) 南北朝時代(小説) 
そろそろ恒例になりつつある捏造南北朝シリーズ。相変わらず妄想だけが頼りだよ!!
後醍醐天皇の妃、禧子と廉子の話。
禧子に関しては病弱で廉子とは対照的な大人しい物憂げな印象の女性だったのですが、
別件の資料では……あれ、そうでもなくね…?只の悲劇の女性ってだけではないようです。
けど我が家の南北朝は基本「太平記」ベースの捏造で行こうと思ってるんで、まぁそんな感じ(どんな感じだ)
花園天皇日記(”シンキ”だけど変換が面倒なので)が元弘2年だか3年までしかないことを
昨日始めて知りました…何だよ天皇!後醍醐の戦いはまだ始まったばかりじゃないですか!!

明日から暫く試合云々に集中します…とりあえず雑念を捨てるんだ。それだけ考えるんだ…



「鏡面に住む怪物」(禧子と廉子)
正妃と愛妾の対決(?)まったく違う教本をその手に抱えて生きている二人。
あんまり気持ちのいい話ではない(というか意味不明)なので注意!!








「寂しいんですって、バッカみたい。」

結局ただの子供の癇癪なのよ、と馬鹿にしていることを隠しもしない口調で廉子は笑った。
禧子はただそれを黙って見ている。出来るのは眉を顰め、不快感を少しでも露わにすることだけだ。
廉子がともすれば不敬とも、自らの立場を貶めかねぬ言葉を吐くことに物怖じしないのは
ただ偏に彼女がかの人と自分を心底侮り、嘲っているからだ。
例え禧子がこの場で聞いたことを誰に――例えば夫に、かの人に告げようとも
信じてくれなどしないだろうことを廉子は十分すぎるほどよく分かっているからだ。
それを知りながら、彼女の増長と身を震わせるほどの屈辱を感じていながら、
結局禧子には黙ってみていることしか出来なかった。
(だって、それは全て本当のことだったから)
そんな禧子を見て廉子がまた侮蔑の笑みを浮かべる。
そんなんだから、貴女も駄目なのよ。
そんな在りもしない揶揄が彼女の鈴を転がすような声でリアルに再生される。何度も何度も。

「笑っちゃうわ、帝とあろうお方が。ねぇ、そう思わない?人として一番最初にあるべき覚悟が今更足りないなんて。いい年して帝位についたのが逆に堪えてるとでもいうのかしら、ねぇ?」
「……馬鹿にしないで。」
「あら。」

何かをしなければ、何かを言わなければ。
苛立ち染みた想いに突き動かされてようやく禧子に出来たのは
擦れるような、ともすれば風にまぎれて消えてしまいそうな小さな小さな声で
廉子に不服の念を恐る恐る示してみることだけだった。
そんな禧子の弱腰はお見通しなのだろう、しかし廉子は口に出しただけでも
褒めてやろうといわんばかりにわざとらしく口に手を当てて驚いたような声を上げた。

「あらあら少しはものが言えるんじゃない。ただの気弱なお人形さんだと思ってたわ、ごめんなさいね。」
「………馬鹿にしないで!」
「怒っているの?それは誰に対して?誰の為に?」

思わず声を荒げた(それでも全身の勇気を振り絞らねばならなかった)禧子の様子に
何ら構うことなく、廉子は小馬鹿にするように笑った。
…笑った、が先ほどまでのそれとは違和感のある笑いだった。
ねぇ、貴方は何に怒っているの?
そう問い詰める廉子は笑っている。笑っているけれど、声は底冷えがするほど冷たかった。
そう気づいた瞬間、全身にぞわり、と悪寒が走る。
目の前の笑う愛らしい少女がまるで恐ろしい怪物であるかのように禧子の身体は震え、
その足は自然と背後へ踏み出していた。そんな禧子を廉子は嘲笑いながら一歩一歩、近づいてくる。
下がっては距離を詰め、下がっては…同じ分だけ進んでいる筈なのに
じわじわと追い詰められるような恐怖感に、焦りとは対照的に引く足は鈍くなる。
カツ、と一際強く大きく踏みしめられた廉子の足に禧子はひっと短い悲鳴をあげ、
とうとう二人の足は止まった。
口付けるのではないかと思うほど大胆に廉子は禧子の顔を覗き込み、美しく笑った。

「ねぇ、結局貴女は何がしたいの。」

目の前の少女の顔は人並み以上の容姿を持つと自負する禧子でさえ見惚れるほど美しく、
しかしそれ以上に冷たく、恐ろしく、おぞましかった。
廉子は笑っている。しかしその声は目の前の得物に決して逃走を許さない冷酷なそれだ。
耳を塞ぎたくても身体は震えるばかりで、例え塞ぐことができても容赦なく心に突き刺さるそれ。
(やめて、やめてやめてやめて―――)
目の前の少女の小さな唇が優しく、しかし奈落に突き落とすような冷たさを持って
禧子を責め続ける。少女は笑う、そんな禧子が無様で仕方が無いというように。

「何がしたくて、その為に何をしようとしたの。何が邪魔で、何が必要か考えたことは?その為にどんな努力を?その為にどんな犠牲を覚悟したの?ねぇ、貴女、何がしたいの?」

容赦のない声に、力なく首を振る。
禧子はやはり答えられなかった。
答えられるはずも無い、禧子と目の前の少女は同じ人の形をした肉でありながら
その本質はまったく別のものだ、別の生き物だ。
少女の言っていることが、望んでいることが、是とすることが、禧子には何一つ理解できない。
そんな彼女が、禧子にこれ以上何を望むというのか。
彼女が、その理解不可能な全ての術を持って禧子から多くのものを奪っていったというのに。
唇を噛み、逃れられもしないそれから少しでも遠ざかりたくて地面に目を落す。

(分からない。分からないわ、貴方は、貴女には。私だって分からない。だって―――)

俯いてその細い肩を震わせる禧子に対し、廉子は責めを続けなかった。
ただ、ぼんやりと興味を失ったかのように禧子を見つめている。
二人の間に存在するのが己のか細い悲鳴だけだと思うと、禧子は余計に惨めだった。


「だから、貴女”は”駄目なのよ。」


今度は確かな音を伴って、その涼やかな声は禧子の耳に心に突き刺さった。
ぎゅっと瞑ってみても、潤みもしない己が眼が憎らしかった。溢れてくるのは、絶望だ。

 

禧子を見つめる廉子は、もう笑ってなどいなかった。










禧子が悪いんじゃなくてこの場合廉子がとんでもないんじゃないだろうか(死)禧子はまぁ本人にも色々問題はあったみたいだけど(爆)悲運の女性だったなぁ…と思います。せめて後醍醐天皇との間に皇子がいたのなら。後醍醐天皇が略奪婚(!)したくらいなのだから、さぞかし愛があったろうと思ってたのですが、やっぱりその辺も政治的意図があっての話なのですね…後醍醐マジ半端ねぇわ…。多分後醍醐天皇は廉子に「寂しい」とか言ってないと思う。誰にも言わんと思うっていうか気づかないと思うあのおっさん。だから冒頭の廉子の台詞は推測で言ってる感じでお願いします(誰に言ってんの)

 

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